絵は言葉を使わずに、気持ちを伝えることができます。
子どもにとって絵を描くということは上手に描くことだけが目的ではありません。
しかし、教育現場において、気持ちを現するような自由な表現は評価されにくいのが現状だと感じています。
彫刻家の佐藤忠良さんは
「上手に描こうとするよりも、観たり、考えたりしたことを、自分で感じた通りに描くことが大切です
真剣にものを作り続けていると、
上手になるだけでなく、人としての感じ方も育ちます
この繰り返しの中で、自然の大きさがわかり、
どんな人にならなければいけないかがわかってきます
これが目当てです」
という言葉を残しています。
私は毎日読み返して心に刻んでいます。
さて、
子供の頃から与えられた内容の中で生きていると、どうなると思いますか?
ルールや制度に対しての自己判断も曖昧になり、自信も無く、ただ従うだけの人となっていくとは思いませんか?
これが「常識であり、いい子」となり、そうではない児童や生徒に対しては「これはルールだから」とか「ここは学校だから」と諭されますが、
実は、大人自身の問題であることに気づいて欲しいのです。
大人自身の問題、それは、「自分を正当化したい」ということ。
「ルールの中で育ってきて、評価をされ、良い経験ができたから、同じようにしてあげたい」
そうした思いがある人からすると、現状の変化を求める必要性は感じられないかもしれません。
しかし、「子どもは何かを感じ、伝えようとしている」という視点で、向き合うことは大切なのではないでしょうか。
映画の寅さんや、たそがれ清兵衛に出たセリフを引用すると、
「他人によって、制度によって振られた、
あるいは自分で振った、サイコロの出た目で決めるとか、そのときの気分(雰囲気、空気を読む)で決めるしかしょうがない」
という思想というものがたくさん生まれていると感じています。
「大人も子どもも自分で必要なものを探して、勉強したり、絵を描いたり、ものを作り続けたりすると、自分の頭できちんと筋道をたてて、こういうときはどうしたらいいかなと考えることができる」ようになります。
「真剣な時間があればあるほど、どんな学問でもどんな状況でも、自分の頭で物事を考えられるようになる」、つまり「考える力」です。
世の中がどう変わろうと、この考える力さえ持っていれば、なんとか生きていけるのだと私は確信しています。
そうした力を私は育てたいと思って指導しています。
坂本千弦(ちっち)