わたしは真剣に絵を描いてもう30年以上が経ちます。
教員として17年、そして「ちっちのアトリエ」を立ち上げて6年目。
大学生の頃に出会ったレッジョ・エミリア教育や、イタリアでのアーティスト・イン・レジデンス、そして教員生活。
そのすべてが「子どもたちにどう生きてほしいか」を考える原点になりました。
そして今も、アートを通して心をほぐし、未来に向けて歩く力を育てたいと思っています。

教員時代、美術室に訪れて「先生、どうしたらいい?」と泣きながら進路を相談してくる生徒たちがいました。
その時いつも伝えていたのは——
「自分の人生やのに、なんで人に決めてもらうん?
どっちに転んでも後悔するなら、好きな方を選びなさい。」
生徒は涙を流しながら「誰もそんなこと言ってくれなかった」と言ってくれたことを覚えています。
コロナの時期には、画面越しに「友だちに会いたい」「スマホ飽きた」と訴える子どもたちを前に、教育の意味を何度も考え直しました。
ネグレクトや家庭の事情に直面する生徒もいて、自分の無力さも痛感しました。
だからこそ今のアトリエでは、ただ「つくる」だけではなく、
「何を考え、どう行動するか」を試す実験の場を大切にしています。

子どもたちに必要なのは、ただの技術や作品の完成度ではありません。
「どんな未来をつくりたいか」を考える力。
「誰と、どんな言葉の中で生きるか」を選ぶ力。
そしてその基盤は、実は毎日の食卓や親子の会話にあります。
失敗の経験を共有し、どう乗り越えたかを子どもたちに伝えること。
それが未来を生き抜く力につながります。
私は、千葉とハワイという2つの拠点を行き来しながら、そんな教育を続けていきたいと思っています。
2027年ごろからは、ハワイでの活動も広げていく予定です。

「何をするかを考える場所」——それがアトリエの役割です。
その実験と対話の積み重ねが、子どもたちの未来を形づくっていくのだと信じています。