現代の教育現場や家庭では、どうしても「目に見える成果」が急がれがちです。
偏差値、点数、順位。しかし、それらを追い求めるあまり、私たちが最も大切にすべき「子どもの根っこ」を疎かにしてはいないでしょうか。
今回は、2歳から大人までが集うアトリエでの実体験を交えながら、子どもの未来を支える本当の土台づくりについて考察します。
1. 異年齢が混ざり合う「挑戦の土壌」
私のアトリエでは、子どもは2歳から高校生まで、大人は78歳まで約70名が通っています。
年齢層がバラバラな環境で創作を行うのは、あえてのことです。
そこには「自分にできるか分からないけれど、やってみよう」と思える自然な刺激が溢れています。
この「やってみたい」という自発的な芽を育てるために大切なのは、大人の「教えすぎない」姿勢です。
例えば、絵の具の蓋が開かない時。全部開けてあげるのではなく、半分だけ緩めて渡したり、一度開けて見せてから「自分でやってごらん」と戻したりします。
一見、意地悪に見えるかもしれません。しかし、自分の力でやり遂げる「アウトプットの数」こそが、本物の学びになります。
2. 「どうしたい?」が引き出す自己決定の力
子どもに「どうしたらいい?」と聞かれた時、私はあえて「あなたはどうしたい?」と問い返します。
すぐに答えが出ることもあれば、「わからないから聞いてるのに!」と反発が生まれることもあります。
しかし、その葛藤こそが重要です。自分で考え、自分で判断し、自分で動く。
アートの制作工程には、この「自己決定」のプロセスが凝縮されています。
・教えすぎない
・でも、すぐそばにいる
・静かに見守り続ける
この姿勢が、子どもにとって「安心」と「挑戦」を両立させる最高の環境になると確信しています。
3. 「楽しい」こそが、成長を司る「根っこ」である
子どもが心の底から「楽しい」「自分で選びたい」と感じた瞬間に、はじめて根っこは動き出します。
外圧によって無理に引き上げられた成長は、植物でいえば「徒長(とちょう)」の状態です。
一時的に評価は上がるかもしれませんが、自立した根が張っていないため、外からの力がなくなると立ち続けるのが難しくなります。
対して、「楽しい」から始まる行動は自走する力を持っています。好奇心という根から吸収した知識は、表面的な暗記を超え、一生の知恵(血肉)となります。
アートが教えてくれる「人間の核心」
もし私がただ作品を作るだけの作家であれば、アートのこうした側面には気づけなかったかもしれません。日々子どもたちと向き合い、彼らの成長をサポートする中で、アート教育は教育の、そして人間の核心に触れるものだと実感しています。
根さえしっかりと張れば、適切なタイミングで自ずと幹は伸び、枝葉は広がります。
大人の役割は、無理やり引っ張り上げることではなく、子どもが自分の中から湧き出る「楽しさ」に出会い、その根っこを思いきり広げられる土壌を守り続けること。それが、どんな嵐が吹いても倒れない、子どもの未来を支える本当の土台になると信じています。